2024,4,9第三句会

 

「蜃気楼」

蜃気楼知らぬ工場知らぬ塔      鈴呂屋こやん

食ふて寝る旅の途中か蜃気楼     小巻この葉

一礼にかすかな不安蜃気楼      竹中しづり

終れない終われないまま蜃気楼    福島浪日子

蜃気楼向かうにあらむ幼年期     細谷朋々

蜃気楼コナンくんの名解答      海内七海

ラブアンドピース遥けき蜃気楼    柏瀬一泻

神さまも青い地球もしんきろう    竹村半掃

たぬきかな悪知恵ばかりきつねだな  福島浪日子

蜃気楼沖にゆきかふ過ぎしひと    藤間満天星

補陀落を目指す小舟か蜃気楼     宮本純代

夢と欲ゆらめいている蜃気楼     内野廣子

 

「猫の子」

親猫の声の仔猫に届かざる      小巻この葉

猫の子が小さく泣きて住宅地     福島浪日子

親を呼ぶ子猫の声や空暗く      鈴呂屋こやん

捨てられし子猫の無邪気生きてやれ  細谷朋々

猫の子のトレーディング富士額    藤間満天星

カメラ目線三頭身の子猫達      内野廣子

軸足のぶれて仔猫の手をかりる    竹村半掃

 

「雑詠」

春の月秘め事ほろり明しけり     内野廣子

春眠や琴音の波に酔ひしれて     藤間満天星

春の昼河原でサッカーする三人    海内七海

水ぬるむ頃の陽射しよ頬ゆるむ    鈴呂屋こやん

木道にポーズとる犬風光る      宮本純代

猫の目ウルウル蛙の目借り時     柏瀬一泻

花大根猫が迎える直売所       宮本純代

菜花蝶に化す登校日の点呼      竹村半掃

菜の花や曇り空さへ明るくし     宮本純代

菜種梅雨山そろそろと青みたり    細谷朋々

弾雨降り止まず未だ未だ菜種梅雨   柏瀬一泻

春嵐ずぶ濡れの鶏佇めり       細谷朋々

鷽ぶきて千古の夢のをもはゆし    藤間満天星

今時の花の雲かとゴルフ場      鈴呂屋こやん

花曇り耕運機は軽やかに       海内七海

兄メール「親父の桜咲いたよ」と   竹中しづり

桜餅おかつぱの娘のよく笑ふ     小巻この葉

花吹雪後は野となれ山となれ     内野廣子

花冷えやバスの車窓の散りしきる   海内七海

雨雲の淡墨散らす桜かな       鈴呂屋こやん

修羅を生き仏のごとく枝垂れかな   竹村半掃

葉桜や無口な影と二人連れ      内野廣子

木五倍咲く沢の径はこちらです    竹中しづり

虎杖の折る音楽し母おもう      宮本純代

手渡しの至急回覧紫木蓮       竹中しづり

産土の香は妣の香りや花李      竹中しづり

チューリップ美容院のヘッドスパ   海内七海

チューリップほんたうの顔内緒の顔  小巻この葉

芋植うる地下足袋さらり柳腰     柏瀬一泻

廃屋の蔦に芽吹きの息吹あり     細谷朋々

玉子にも生年月日一年生       竹村半掃

まだまだと捩って捩って鯥五郎    福島浪日子

囀を木霊にのせて恋さなか      藤間満天星

塔の山視界開けり春の蝉       福島浪日子

初虹や明日を思へば明日となり    小巻この葉