令和六年四月二十八日第一句会より

猫の子や空気のぬけし鞠のごと    植田忠克

珊瑚船消へて海市の波騒ぐ       酒井天敏

島を出る少年に吹く青嵐       岡本保

ワレチチノ命日シラズ夏燕      二上貴夫

水入れて棚田の蛙啼きはじめ      吉田榮治

令和六年四月二十六日第二句会より

足先を子猫に預け長電話     沼田典子

ようという少女の夢に燕来る       二上貴夫

花便り胸ざわめきて三分咲き     木村一帰

河鹿鳴く山彦ふかく吸いこまれ    志賀えぷり

二等辺三角形なる四月尽く     竹村半掃

令和六年四月九日第三句会より

葉桜や無口な影と二人連れ     内野廣子

チューリップほんたうの顔内緒の顔   小巻この葉

菜種梅雨山そろそろと青みたり    細谷朋々

弾雨降り止まず未だ未だ菜種梅雨     柏瀬一泻

修羅を生き仏のごとく枝垂れかな  竹村半掃

令和六年三月二十四日第一句会より

雨が降るレタスの里の畝長し     二上貴夫

春一番つがいの鳩の呼びあいし   佐藤和子

啓蟄や歩くたび鳴る鍵の束     岡本保

飛花落花九十九曲りの男坂      後藤文彦

つばくらめのれんをくぐる宵の口  酒井天敏

令和六年三月二十二日第二句会より

冴えかへる廊下の奥の人体図    竹村半掃

青春を少し巻きたるレタスかな     小泉美容子

燕来て何思うシャッター閉じた街  鈴呂屋こやん

レタス噛む待つは厚目のハンバーグ  志賀明子

実も花も知らずやレタスみどりの日    木村富美雄

令和六年三月十二日第三句会(はるたけ句会)より

春寒や我楽苦多市の解剖図    竹村半掃

残り雪五百羅漢のささめごと       藤間満天星

雲に色のこして山の春暮かな    細谷朋々

シャキシャキを命と訳すレタスかな    内野廣子

相槌を上手く蛙の目借り時     福島浪日子

令和六年二月二十五日第一句会より

春の野は名画に勝る香りあり    大石繫子

バレンタインデーカタカナあふる日本かな   岡本保

バレンタインデーきらきら渋谷の交差点   酒井天敏

水温む空気は丸く球のやう    二上貴夫

春塵にサーカスのジンタ流れけり   植田忠克

令和六年二月二十三日第二句会より

宙吊りの日本列島黄砂くる      竹村半掃

くすみゆく近現代よ黄砂飛来  鈴呂屋こやん

駄菓子屋の百円握るバレンタイン    沼田典子

スケッチの絵の具が散って春近し  田中浩

つちふるや大河にのりて川下り     小泉美容子

令和六年二月十三日第三句会(はるたけ俳句会)より

つちふるや敵に味方におもかげに  細谷朋々

朽野や火照る地球の無音音    藤間満天星

長らうや遠い光と霞む影   鈴呂屋こやん

うららかや弥勒菩薩の眉細く   小巻この葉

裏道を駆ける足音寒の明け     竹中しづり

令和六年一月二十八日第一句会より

餅あわいフランスパンにバター塗り  植田忠克

補聴器の藪に捉へし初音かな  酒井天敏

歳時記に今昔ありぬ餅あわい   後藤文彦

初句会九十六歳の新入生    佐藤和子

推す敲く頭を叩き初句会   大石繫子

令和六年一月二十六日第二句会より

蝋梅や閉じた月日の溶け始め   鈴呂屋こやん

短冊の筆圧強き初句会      沼田典子

自画像の皺の数だけ年迎ふ    竹村半掃

空仰ぎイマージン聴く餅間ひ   小泉美容子

初句会名乗る声にも張りがあり  田中浩

令和六年一月九日第三句会(はるたけ俳句会)より

去年今年大きな荷物置きわすれ  小巻この葉

こころもち浮力にまかす冬帽子  竹村半掃

山茶花や罪な人だね無頓着    竹中しづり

日暮まで好きなことだけ四日かな 内野廣子

人の難言うまいぞ今日初句会   鈴呂屋こやん

令和五年十二月二十四日第一句会より

庭園の曲線残し掃き納め     濱田恵美子

日めくりをまとめてはがす師走かな 植田忠克

惜しからぬ命とは嘘ポインセチア 酒井天敏

仏壇は最後に清め掃納      立石采佳

蓋とれば鰤の白眼にぶつかりし  大石繁子

令和五年十二月二十二日第二句会より

訪ねれば竹が風呼ぶ実朝忌   内野廣子

実朝忌切り通しまで海の風   沼田典子

実朝忌塚にただようロマンかな  志賀明子

五分刈の座敷帚や掃収め     小泉美容子

  煮え滾る地球の果へ掃き納め   竹村半掃  

会員の俳句(山麓426号より)

秋惜しみコキアの丘に登りけり  二上貴夫

ほんたうの話しこれからすぞろ寒  竹村半掃

旅客機の階段降りるそぞろ寒  酒井天敏

枝先のぽつと恥ぢらひ冬桜  立石采佳

冬桜陽のぬくもりやアスファルト  金上康志

水鏡地震百年の池の秋  後藤文彦

終活も近くになりたり冬支度  田中浩