2024,4,28第一句会

 

「蜃気楼」

珊瑚船消へて海市の波騒ぐ      酒井天敏

楼蘭に馳す夢いくつ蜃気楼      岡本保

蜃気楼海上浮遊眺めをり       立石采佳

穏やかな海笑い声蜃気楼       鈴呂屋こやん

海水温上がれば失せる蜃気楼     後藤文彦

光芒にUFO舞い降り蜃気楼     吉田榮治

干拓の長き堰見ゆかいやぐら     植田忠克

MRI筒の中より蜃気楼       佐藤和子

忘れもの映してほしい蜃気楼     大石繫子

蜃気楼都市伝説のごとく揺れ     二上貴夫

 

「猫の子」

猫の子や空気のぬけし鞠のごと    植田忠克

ネコのヒゲ道案内のアンテナか    吉田榮治

猫の子の襤褸のごとく親咥え     岡本保

目の開かぬ子猫を捨てし罪と罰    後藤文彦

涙する保護の猫の子譲渡の日     佐藤和子

今日からはここが君んち子猫ちゃん  立石采佳

震えてた子猫見知らぬ部屋の隅    鈴呂屋こやん

子猫達シャッター通りの運動会    大石繫子

この猫の子猫この猫この仔猫     酒井天敏

長々とつづき回廊恋猫が鳴く     二上貴夫

 

「雑詠」

水入れて棚田の蛙啼きはじめ     吉田榮治

鈴振るが如く妙なる河鹿笛      酒井天敏

河鹿鳴くMRIのごとにぎにぎし   植田忠克

ガザの百年紫荊の二千年       後藤文彦

様々に詠みし言葉よしゃぼん玉    鈴呂屋こやん

まだ軽きランドセル背負う桜かな   植田忠克

墨染に楊貴妃桜の恋衣        大石繫子

葱坊主いたずら好きの男の子     大石繫子

雨後の山雲わき上がり夏近し     佐藤和子

名水の湧き出でし里春惜む      吉田榮治

幾度も揉洗ひをし春惜しむ      立石采佳

江戸からの菓子舗の暖簾夏始     後藤文彦

夏句会座布団二枚足伸ばす      鈴呂屋こやん

トンネルを過ぎて雨止む若葉かな   二上貴夫

観音の顔をかくすや若葉雨      佐藤和子

稀に立つ幟をはたく谷戸の風     酒井天敏

島を出る少年に吹く青嵐       岡本保

ワレチチノ命日シラズ夏燕      二上貴夫

本音いふことむずかしき晶子の忌   岡本保